東亭順×小林俊哉  2014.10


                                                                                                                                                                          Gallery Camellia a piece of  space  

美術家、東亭順さんプロデュース"songs for a pigeon" アートプロジェクトはスイス日本国交樹立150周年をきっかけにスタートしました。
もともとは4年前より彼がスイスを拠点に制作活動をしつつ、友人でもあるアーティストAxel Töpferアクセル・テップファー とユニットを組み、今後も様々なユニットを組みながら展開していく第1弾となる旅するアートプロジェクトです。

10月23日在日スイス大使館を皮切りに、スイスと日本の総勢16組のアーティストが関東圏、名古屋、長崎と各地に全て異なる展示を展開し、ワークショップ、トークイベントを繰り広げています。

現在、木場gallery COEXIST TOKYO,銀座ギャラリーカメリア,a piece of space APS(プロジェクト公式HP、日々の出来事を更新しています)更新で同時開催中。小林俊哉さんは2001年よりドイツ、ヨーロッパにて美術館、ギャラリー等で発表を続け1年の1/3 は海外で制作されています。文化庁芸術家在外研修過程を終了しプロジェクト参加作家でもあるお2人とこのプロジェクトの流れや見どころ、ご自身の世界観についてお聞きしました。

 

東亭:いつかスイスのアーティストと日本のアーティストが交流する場ができたらと思っていました。2,3年前から考えていたことですが、150周年記念ということをきっかけに思い切って友人らに声をかけ、今回はAxel Töpferアクセル・テップファー とユニットで考えましたが今後もいろいろな人と活動していきたいと考えています。運営?そんな大変じゃないです(苦)。プロジェクトを発足した当初、ことごとく助成申請は却下されました。まだ返事を待っているものもありますが多方面から協力してくださる方がいて本当に心強く助けられています。

小林:僕はいつも一生懸命真摯に活動している素晴らしいアーティストと出会うと、内外関係なく誰かに紹介したくなるんです。20数年これまでずっとヨーロッパ、ドイツ、スイス、中東などのアーティストを機会あるごとに日本に紹介していますが、今回も友人が多数参加しているので楽しみにしています。

後期APSの個展のSusanna Niedererスザンナ・ニーデラー もそのお一人ですね。大変親日家で、毎年来日されています。小林さんは最近イランなど中東のアーティストの紹介もされていて大変興味深く拝見しています。
東亭さん、今回の作品≪flowers≫は2013年スイス・バーゼルではテーブルを覆うように展示されていましたが、APSのストイック なホワイトキューブの空間でとても大胆なインスタレーションになりましたね。

東亭:この作品は、まず中古品店などや知り合いから手に入れた古いシーツやリネン8パーツほどを手縫いでつなぎ合わせ、ポピーオイルを染み込ませてから8色くらいの赤系統の水彩色鉛筆でひたすら描いていったものです。古いシーツはダマスク織りといって、ごく一般的に使われているものですが、人々の記憶やその場所の歴史や物語を感じるので、そこに今を織り交ぜるように上書きしていく感じです。

 

7月頃から手縫い作業が始まり、染み込ませたオイルが半乾きになるまで待ちながら描写でしょ。8月中旬くらいだったかな。始めはすごく意気込んで密に描いていたけど、かなり大変でした。よく見ると描き始めの中心部分がすごく濃くて両端になるほど(笑)バーゼルでは水平だったものを天井、壁、床の3方面から展示してみたかったんです。

小林さん、今回の作品ではこれまでには見られなかった鳥が描かれていますね。3.11以降黒く塗りつぶされた背景の中に描かれるものが多いように思いますが、お聞かせいただけますか?


小林:いろいろなところで言っているんですけど、3月11日の大震災の様子や福島第一原子力発電所が爆発するのをテレビで見ていて、あぁもう日本も終わりだなと本当に思いました。その脱力感というか、でも必ず次の日も朝がやってくると思いつつも放送される被災地の景色はただただグレイで、僕の中から色がなくなったというか浮かばなくなったんですよね。それ以前から黒は使っていたんですけど。まぁ自分が変わらなければ世の中変わらないなと思い始めて、色を使うようになりましたね。

それは震災後、どれくらいでそういう気持ちになられたのですか?

小林:いやぁ、1年以上経ってからですね。震災前は白黒で好きなモクレンを描いたりしていたのですが、震災後スイスで制作している時に森を描いていたんですね。でも枝や木はゆがんでいるというかまっすぐではなくて、かろうじて緑を少し使っている感じで。そしたらギャラリーの人が「あ、色を使っているじゃないか」と言ってくれて。昔から黒を使うのは、黒は全てを含む、僕の気持ち全てを含むという意味を込めているんです。ところが震災後、僕の中で黒の意味が全く変わってしまったんです。自然は変わらず、桜もモクレンも咲くけれど、僕の中では以前ほど心から美しいと思えなくなっていて。

ボックスアートのようなドライフラワーとなったバラの作品≪そして、バラもまた夢をみる≫1997がありますね。

さい頃「バラ色の生活」って何色なの?って聞いたんですよ 母親はピンク、父親は赤とかみんなそれぞれ違うんですよね。僕にとってバラ色ってなんなのかなと。ドライフラワーになったバラがとても美しく思えた。これが僕にとってのバラ色なんだなってその時思ったんです。それであの作品を制作しました。自分としてはあの作品は特別なもので手放したくないと思ったんですが、そういうものに限ってけっこう売れてしまうんですよね。あれは最後のひとつです 今回それを持ってきました。

小林さんは植物や昆虫など自然がとてもお好きでフェイスブックにも季節感のある記事をあげられたり、特にご出身の北海道での木々や花々などの写真は原風景としてたびたび作品にも表れているように思います。


小林:僕自身もガイガーカウンターをもっていて、時々計測するんですが美しい草花のそばで非常に数値が高かったりするんですよ。彼らは動くこともできず、いつもと変わらない美しい姿で生きている。それが本当に愛おしくてね。蝶なんて確実に減っていると思います。蝶が減るということは様々な植栽が減っているということだから。近所にある木でいつも卵を産んでさなぎから蝶になるのを楽しみに見ていたんですけど、卵を産まなくなった。寂しいかぎりです。絵の中の小鳥たちは小さな生き物の象徴として描いています。

東亭さんは、空や雲など風景写真を元にして丹念に描写を繰り返し磨きあげて完成する≪Float≫なども代表作のひとつですね。2011年夏にバーゼルで書かれたテキストの引用からですが、「客観的な事実を光に焼き付けられる写真の視覚的な強さは、人を引きつける。3.11の被災地では、思い出のつまったアルバムを何よりも先に探し求める人々をニュースで知った。人は自分の人生を振り返り生きてきた証拠を確認し、それを未来に生きる力に変えるのだろう。」と言われています。そして「だとすると、撮影時にはすでに未来の視点からいまこの時をすでに愛おしむ視線がそこにあったとも言えるのではないか。」と続けられています。これについては、またゆっくりお聞きしたいと思っています。

おふたりはスイスやドイツなどでは会われているのですか?

小林:行けばかならず連絡はいれています。
東亭:僕は小林さんにいつも質問してますね(笑)。

ギャラリーの情報とか?

東亭:けっこうお土産なにがいいかってのを聞いてます(笑)小林さん見つけるのうまいんですよ。

小林:鉛筆はもう何ダース持って行ったかわかりません。あとボールペンね。最近うけがよかったのは動物の紙風船。浅草橋の問屋さんなんかで何十円とかで売ってるんですよ。

参加者:「消えるボールペン」あれはダメでした。ドイツだと紙質が違うから消えないんですよ。

東亭さんは今回スカイツリーの見える一戸建てのレジデンスに泊まってらっしゃるんですよね。

東亭:環境はいいけど、お風呂ないんで、3人の共同生活はけっこう大変です。毎晩銭湯に行ってね。あそこらへんの銭湯については詳しくなりました あそこは何時に閉まるとかね(笑)。

今回のsongs for a pigeon の由来は?

東亭:僕がまず声をかけたのがアクセルでした。彼は僕がスイスに行った最初の頃に出会ったんです。ユニット名を考えるにあたって何がいいかなって思った時、pigeonが浮かんだ。アクセルは鳩の真似がうまいんですよ。そうそう、アクセルとDavid Berwegerダヴィド・ベルヴェガー と3人で動物の鳴き真似をしてたら、お国柄で違うんですよね。それが面白くって。その後アクセルが監督としていくつか映像作品を作りバーゼルで公開しています。

視聴したいですね。いつかぜひそういう機会をつくってください。最後にプロジェクトの見どころを教えてください。

東亭:10月23日、在日スイス大使館の小品展示を皮切りに、25日から木場のCOEXIST TOKYO,EARTH +GALLERYでインスタレーションを含む前期後期の前期がスタートし、今日から銀座奥野ビル内にあるギャラリーカメリア、APSで個展とグループショーを同時開催しています。これも前期後期があり、しかも今回こちらでは初めて紹介するアクセルとダビドの個展もカメリアで開催します。他には長崎、名古屋へ展示とワークショップなどイベントがあり、東京に戻って11月8日から仙川のプラザギャラリー、サジオでインスタレーションなどを含む展示が30日まで続きます。各地の展示が同時進行する感じかな。僕らはあちこちに展示設営に回っています。とにかく COEXIST TOKYO, EARTH +GALLERYの展示はなかなかかっこいいんで ぜひ見に来てください。カフェも併設されていてゆっくり鑑賞することができますし。カメリアの光、APSのストイックな空間もぜひ見てもらいたいです。(会場風景:COEXIST TOKYO)僕らの活動は制作や移動の合間をぬってフェイスブックのHPにも更新しているので、ぜひのぞいてもらえたら嬉しいです。

 

各会場を回って、様々な表現や感性に出会って楽しんでいただきたいですね。小林さんは、12月13日から国立新美術館、第17回「ドマーニ明日展」で大作を含む新作の発表も控えておられ、お二人ともご多忙の中お越しいただきありがとうございました。

【編集後記】
旅する展覧会と呼びたくなるプロジェクト。全て手作り、大胆にして繊細で各会場ごとにその場所性を読みとり 様々な表情を披露しています。ダヴィド・ベルヴェガー の自ら生成した灰で色彩を作り構成する作品(COEXSIST TOKYO, プラザギャラリー)や平面作品(ギャラリーカメリア)、 アクセル・テップファーは日本でインスピレーションを得たというインスタレーション(プラザギャラリー)や写真(ギャラリーカメリア)、烏山秀直と東亭順のユニット「烏亭」による菊をモチーフにしたインスタレーション(プラザギャラリー)など一人一人の作家の個性や多様性の中に一貫したコンセプトが見えてくるのではないかと思います。又長崎、川崎では予備校で物づくりからプレゼンテーションまで表現するということについて学ぶワークショップも開催するとのこと。 会期は12月7日まで。お見逃しないように! (11月11日現在の報告で、13日以降の展示作品についてはぜひ会場でご覧ください)                                                                                                                                                                                                  撮影協力 mio kisaca

会期  2014年10月23日-12月7日
場所  
スイス大使館 (東京)、gallery COEXIST TOKYO (東京)EARTH+GALLERY (東京)a piece of space APS (東京)
ギャラリーカメリア (東京)プラザギャラリー (東京)、N-MARK B1(名古屋)諫早造形研究室 (長崎)、トーリン美術予備
校/旧登臨美術学院 (川崎)  

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